「羊をめぐる冒険」の翻訳(92)
5 1/5000(2)僕が話し終えても彼女はたいして驚いたようには見えなかった。話を聞きながらずっと耳の掃除をし、何度かあくびをした。
「それでいつ出発するの?」
「出発?」
「だって羊を捜しにいくんでしょ?」
僕は二本めの缶のプルリングに指をかけたまま顔をあげて彼女を見た。
「どこにも行きやしないよ」と僕は言った。
「でも行かないとまずいことになるんじゃないの?」
「べつにまずいことなんてないさ。どうせ会社は辞めるつもりだったし、誰に邪魔されたって食べていくくらいの仕事はみ付けられるよ。まさか命までは取らないだろう」
彼女は新しい綿棒を箱からひっぱり出してしばらく指でいじりまわしていた。「でも簡単な話じゃない。要するに羊を一匹みつけ出せばいいんでしょ?面白そうだわ」
「みつかりっこないさ。北海道は君が考えているよりずっと広いし、羊だって何十万頭もいるんだよ。そんな中からどうやって一頭の羊をみつけ出せばいい?不可能だよ。たとえその羊の背中に星のマークがついているとしてもさ」
「五千頭よ」
「五千頭?」
「北海道にいる羊の数よ。昭和二十二年には二十七万頭もいたのが、今では五千頭しかいないの」
「どうしてそんなこと知ってるんだ?」
「あなたが出ていってから図書館に行って調べたのよ」
僕はため息をついた。「君にはなんでもわかっているんだな」
「そうでもないわ。わからないことの方がずっと多いもの」
「ふうん」と僕は言った。そして二本めのビールを開け、彼女のグラスと僕のグラスに半分ずつ注いだ。
「とにかく北海道には今五千頭の羊しかないのよ。政府の統計資料によればね。どう、これで少しは気が楽になった?」
「同じことさ」と僕は言った。「五千頭だろうが二十七万頭だろうがたいした違いなんてないよ。問題は広大な土地から羊を一頭みつけだすということにあるんだ。おまけに手がかりひとつないときている」
「手がかりはなくはないわよ。まず写真があるし、それからそのあなたの友だちがいるじゃない。どちらかのルートからきっと何かがつかめると思うわ」
「どちらもとても漠然とした手がかりだよ。写真の風景はありふれたものだし。鼠の方は手紙の消印さえわからないんだぜ」
彼女はビールを飲んだ。僕もビールを飲んだ。
我说完之后她也并没有表现出什么很大的吃惊。在听讲的时候她一直在掏耳朵,还打了几个哈欠。
“那么,什么时候出发?”
“出发?”
“不是要去找羊吗?”
我的手指还挂在第二罐啤酒的拉环上,抬起头看着她。
“我哪里也不去。”我说。
“若是不去的话就会很糟糕的!”
“特别糟糕的事也没什么。也已经打算辞掉公司,别管怎么麻烦总能找到混饭吃的工作。总不能连命都保不住。”
她从盒子里抽出一新的绵棒,用手指转动着。“可并不是那么简单的。概要地说若能找到一头羊不是很好吗?不是很有趣的?”
“不可能找到。北海道比你想像的要广阔地多,光是羊就有几十万头。从那么多羊的中间怎么能找到一头羊呢?不可能!还有在那头羊的背上还有星星的记号。”
“只有5000头。”
“5000头吗?”
“这是在北海道的羊的数量。在昭和22年有27万头,到现在也只有5000头。”
“你怎么会知道这些事?”
“你出去之后我到图书馆做了调查。”
我喘了一口气。“对你来说什么事都能知道。”
“并不是那样的。我所不明白的事多得是。”
“是吗?”我说。然后打开了第二罐啤酒,向她的杯子和我的杯子各倒了一半。
“总之在北海道现在也只有5000头羊。这可是依据政府的统计资料。怎么样?对这么少的数字是不是高兴一点?”
“那是一样的,没什么高兴的。”我说。“是5000头呢还是27万头呢?其实都一样。问题是在那么广大的土地上寻找一头羊。再说连一点线索都没有。”
“真的没有线索吗?首先有照片吧;不是还有你的朋友吗?我想别管从哪一个根线索寻找肯定会抓住什么的。”
“这两个信息都是模糊的线索。照片的风景是常见的风景,老鼠这家伙的来信邮戳也弄不清楚。”
她喝了啤酒。我也喝啤酒。
女朋友的能力实在超人。她知道主人公被那位穿黑衣服的男的叫去要做什么。她已经开始做准备,准备陪男主人公一起去找羊。
女朋友能一起去吗?